Tales of Mados & Ringos / 真・窓と林檎の物語
トップ窓と林檎 → 首の太い… 1997.07.21

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真・窓と林檎の物語
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首の太いオヤジの功罪

  さてさて、今宵の話題は先日林檎のヘッドを辞職した、 雨リオ博士なる首の太いオヤジの話である。 実はこのオヤジ、CCDなるデジタルなカメラの心臓部分を発明した偉いオヤジなのであるが、ここではそういうことには触れない。 とりあえず、まだ次のヘッドは正式には決まらないようなので、 出戻りのJobsがちゃっかりCEOにおさまっているそうな。

  この首の太いオヤジは、傾きかけた米の国のとある半導体会社を見事に再建させた手腕を買われて、 96年の2月に林檎会社にやって来た。 そのころは、林檎会社が太陽に吸い込まれると言う話がかなり進行していて、 実現の可能性もかなり高くなっていた時期であった。 太陽に吸い込まれることを歓迎する人も多かったが、 我輩は太陽ではちょっと力不足かな、という気がしていた(太陽は林檎を楽に吸収できるほど、 大きな会社ではないからである=林檎はそれだけ大きい)。 ま、数ある吸収のお話と同じように太陽との件もご破算になり、 その責任を取って回転ドラーなる当時のヘッドが解任された。 ま、我輩は彼は彼なりにちゃんとやったと思うがな。 というか、林檎の歴代のヘッドでどうしようもないハズレというのはなかった気がする。

  思い返せば、林檎の歴代ヘッドはそれぞれになかなか大きな役割を果たして来た。 まず、Jobsは現在の林檎会社に計り知れない影響を与えている。 これについてはさまざまな書籍やら情報源があるので我輩がここで触れることはしないが、 とにかく彼の情熱が林檎を世に広めたと言える。 そのJobsに

「人生の残りを、砂糖水を売って過ごすか、世界を変えるチャンスに賭けるか?」
と口説かれて林檎会社にやって来たスカリーは、 10年間で林檎会社を600万ドルのベンチャーから、80億ドルの巨大な世界的企業へと育て上げた。 ニュートンを作り、大ヒット作・即刻を創った。 さらに帳面型への展開や、国際仕事機械との連携(実はのちのち重要になってくる)も進めた。

  つづく回転ドラーは今一つ、これ!と言える業績に欠けるが、 元ローラの68系からPowerPCへの移行という、 まるで「走っているマラソンランナーへ心臓移植を行う」ような大手術を見事に成功させた点は評価できよう。 それでも門様率いる微かに軟らかな軍団に追い詰められ、 じわじわと苦しくなって来た。 そこへ、太陽による吸収劇の失敗が重なり、ポイと追い出されてしまった。 でやってきたのが我らが首の太い雨リオ博士、 そう、あのとても首の太いオヤジである。

  雨リオ博士だって、就任した当時はすごい期待を背負っていたし、 実際に解任されるまでは表立った批判もほとんど聞かれなかった。 で、在任していた約一年半という短い期間のうちに、 今後の林檎会社の運命を左右する大きな決定をいくつもこなしてきた。 古いほうの系統八の座礁、あるいは、存在との縁談と見せかけて次と電撃入籍。 かと思えば、旧来の林檎系統も残して、 新しい狂想曲との2本立てという貪欲な戦略。 狙うべきは狙い、捨てるべきは捨てる。 勢い余って開転送や開文書、柴犬まで捨て去って、民衆の怒りを買ったこともあった(開転送の狂想曲での位置付けは今だ不明だが)。 しかも、全社員の3分の1も削る、強力な再構成により、 会社としてかなり身軽になったことは確かだ。

  が、「決定」をしたにはしたが、いかんせん、タイミングが全てワンテンポ遅れていた。 確かに、進歩の激流がうずまく計算機業界でいつも他社の先を行くことは至難の技であるが、 林檎会社は常にそれを求められている(それが会社の存在意義でもある)。 そこへいくと、微かに軟らかな会社のように人が儲けたのを確認してからそこへ乗り込んで行くというセコい戦術を取ってしこたま儲けている連中もいる。 儲けるだけだったら、昔の日本のメーカーのようなこのセコい戦術の方がいい。 全然頭を使う必要がないからだ。

  で、雨リオ博士だが、就任当初から「自らを会社再構成のために呼ばれた人」と位置付け、 ちゃくちゃくと事を実行した。 ただ、唯一の欠点として、削る方は得意だったが、 創る方はあまり得意ではなかった事があげられる。 古いほうの系統八がコケたりしたのも、今一つ「創る」とか「創らせる」ための力が足りなかったからであろう。 また、Jobsなどが恐ろしいほどの確固たるビジョン(と、それを人に伝えるという話術という大切なスキル)を持っているのに比べ、雨リオ博士はそういう「人に訴える」点が弱かった。 解任後、あちこちで「カリスマに欠けていた」などと言う批判が出て来たのはそのためであろう。でも、解任された後で言うなよな。言うなら最初から言っとけ。起こってから言うのは馬鹿でもできる。 我輩は97年2月の東京の林檎博覧会で雨リオ博士の演説を直接聞いて来たが、 同時に上映されたジョブスのビデオに比べると、 やはり語りの能力にはかなりの差が感じられた (ジョブスのビデオが英語ネイティブを相手にしていたのに比べ、 雨リオ博士が英語の通じぬお箸の国の人々を相手に喋っていたというハンディはあったが)。

  結局、雨リオ博士は会社の毒を出すために雇われた、 憎まれ役だったということかも知れない。 つまり、会社を「削る」役だったということだ。 そう考えれば、もう「削る」段階から再び「創る」段階へと移行している林檎会社では、 もうそれほど彼を必要としていないのかもしれない。 それでも、我輩などはもう少し、せめて今年中、Rhapsodyの目鼻立ちが整うまではヘッドでいて欲しかったという気がする。 彼がいたたらライセンス問題もいずれは決着していたであろう。 Jobsのような荒っぽい方法でなく、だ。 首の太いオヤジは、喋りはうまくないし決断は少し遅ったが、決して間違ってはいなかったのだ。 辞めるのは狂想曲を世に問うた後の来年後半でも良かったのになぁ。

  誰かが言った。

「ボーイスカウトと林檎会社の唯一の違いは、 後者には大人の指導者がいないことだ。」
これは言い得て妙だ。 ジョブスは決して大人とは言えなかったし、 それ以外は多少の差はあれ皆「オヤジ」の指導者だった。 確かにここらへんで一つ、大人の指導者に見てもらうのがよかろう。 そういえば、違いのわかる女、半コックおばさんってのも案外いいかもな。最近はすっかり名前を聞かなくなったけど。

  どっかのページでは、林檎の頭を勝手に投票で選んでいたそうである。 それによると、ガイ川崎とジョブスが2強だったそうな。 でも結局はJobsがちゃっかりその椅子におさまっている。我輩が考えるに、 この際だから存在で輝きを放っているガセーにも帰って来てもらって、 みんなで仲良く一致団結して頑張って行くというのがいいのではないかな? 進化した林檎系統、夢の狂想曲、複媒体のための存在系統という、 超強力・超豪華オールスターだ。これだけ強力なラインナップなら、 毛利元就の三人の息子の話ではないが、 さすがの門様でもそう簡単には折れないと思うがどうであろうか?

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