なぜコンピュータの画像はリアルに見えるのか/まえがき

私たちは、目から入ってくる膨大な情報に頼って、日々を暮らしています。コンピュータや携帯電話、カーナビなど、現代の生活には視覚に頼った機械がますます増えつつあります。

しかし、目にはいったい「何」が「どのように」入ってきているのでしょうか? そもそも、なぜ、耳や口、鼻ではなく、「目」から入ってくるのでしょうか? 生活の中で視覚がここまで重要視されているにもかかわらず、そのような疑問に答えようとする本はありませんでした。

本書は、人間とコンピュータの視覚について、その基本的なしくみを説明するために書かれました。

人間の目が見ているのは、もちろん「光」です。では、「光とはいったい何のことか?」「それがどこからやってきて、目に入ったらどうなるのか?」 そういう根本的で深い疑問から始まり、「光を横から見たらどうなる?」「なぜ服が濡れると黒くなる?」などのちょっとした疑問まで。

さらには、コンピュータが私たちに見せてくれる綺麗な文字や画像。実写と区別のつかないリアルな CG や、仮想世界で繰り広げられるゲーム。そのような技術が、いったいどういう考えをどれだけ積み重ねて作られてきた のか。

これらの理由やしくみは今まで、目の本、光の本、アートの本、CG の本など、すべて別々の分野で少しずつ書かれていました。光がどこかで生まれて、それが人間に届き、私たちは「何か」を得る……。そういうひとすじの明確な流れがあるのに、その流れを一体として理解できる本がなかったのです。それが、このような本を書きたいと思ったきっかけでした。

筆者の(現在の)専門が CG や画像処理であることから、コンピュータが画像を扱う方法と対比することで、人間の視覚の巧妙さ・ふしぎさがより明確になるよう心がけて書きました。そして、単にわかりやすく説明するだけでなく、人間が生み出したいろいろなしくみについては

  • 「なぜ、それが作られたのか」
  • 「なぜ、そういう風に作られたのか」
  • 「なぜ、そのしくみが(他のものに比べて)合理的なのか」

をできる限り明らかにするよう試みました。

何かを理解するには、それを生み出した人々が「何をどう解決しようとしていたのか」、その思考ルートを追いかけることが重要と考えるからです。本書は、読者が「数学や物理の専門知識を特に持っていない」という前提 で書かれています。したがって、対象となる読者は、中学生以上のすべての方々です。足し算・引き算・かけ算・割り算ができて、三角形と四角形とが区別できるくらいで十分です(つまり、このまえがきをここまで読むような人なら全員大丈夫です)。

あなたが今この本を「読んで」いる瞬間も、まさに視覚がフル稼働しています。本書で、その華麗で巧妙なしくみの数々に触れてみてください。コンピュータの作り出す画像がなぜ「リアル」で「美しい」のか、その理由が見 えてくることでしょう。