ゲーム理論は日常生活の問題を解決するか?2004-10-26 07:02:53 (5933d)
さて、いつもは面白いと思った本を紹介しているのだが、 今宵は良くないと思う本について語るのである。 Amazonではかなり売れているようで、レビューが30も載っていてたいていかなり好意的である。 が、しかし。 この本は、初心者には「ゲーム理論ですべてが先読みでき、すべてが解決できる」ような幻想を抱かせてしまう。 世の中、そんな甘いものではないのだ。 ふだん、我輩が本を読む時には、付箋紙を使って、気になったところにツッコミを書き込みながら読み進める。 この本は50カ所くらい付箋を使ってしまった。それだけ、気になりどころ満載なのである。 実際の日常生活やらビジネスでは、この本のように事が運ぶ事など、ほとんどない。 なぜなら現実世界で一番難しいのは、正確な評価関数を作ることだからである。 評価関数とは、現状とこれからどういう行動をとるべきかを数値にして、どれが一番いいか選ぶための仕組みである。 まともな評価関数さえあれば、バカなコンピュータでさえちゃんとした答えを出すのである。 将棋やチェスで、超高速コンピュータがようやく人間に勝てるようになったのは、 言い換えれば、ようやくまともな評価関数が(人間の試行錯誤によって)完成したからに他ならない。 しかし、この本では評価関数はすでにあるものとして考え、そこから話を始めている。 現実世界で適用する際に一番問題となる部分を飛ばして、「ゲーム理論は先が読めるからいいぞう!」 と薦めているのである。 コンピュータが作曲したり、小説を書いたり、が難しい理由は、コンピューが作り出した結果を
ためである。本書は、この一番重要な部分が欠けているのである。 ところで、著者の「逢沢明」はペンネームで、実際にはK大のI垣K作助教授である。 しかも、我輩の出身学科の先生である。 我輩が先生と直接話したのはたったの一度、大学院入試の面接のときであった。 その時の印象では、いい意味でとてもK大的な感じのする先生であったことを覚えている。 学生のころ、友人に聴いたうわさ話では
ということであったが、果たして真相はどうなのか。 でもI垣先生。ゲーム理論がおっしゃる通りそんなに強力で万能なら、出世競争も勝ち残れたのではないでしょうか。 うーむ、今日は辛口であった。 |